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しょくじとよだれ。

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音の肥糧を君に蒔く ≪7:34≫

ネクタイを直される宮古が書きたかった
だらしないオヤジ・・・キュン!



7:34


チャイムが鳴った。

まだ支度が済んでいなかったので、ひとまず、ズボンを履き、上はカッターだけ羽織って出た。

「うっわー朝っぱらからえっろーい。これって誘ってんすかね?」
「なわけねぇだろ。まだ支度出来てないから待ってろ」 

5分前行動とはよく言うが、仲山がその類の人間だとは思っていなかった。
むしろ遅れてやってくると思ってたので驚いた。 

「外で?中入れてくださいよ」
「散らかってるから邪魔になんだよ」
「だらしないなー早くしてくださいね」
「お前に言われたくねぇな」

会社の仲山のデスクの上は散らかり放題で、大事な書類は生き埋めになっていたりと悲惨なものだ。
…「後輩の面倒を見るのも先輩の仕事ですよね」なんて笑顔で仲山に言われ、意地で手伝う俺も俺だが。
そして仕事中に遠慮なしに、見るたびあくびをかましているのも仲山だけ。
常に眠たそうな目に、見てる方まで眠気を誘発されそうになるのを堪えるのは至難の業だ。
会社で見てる限り、会社内でだらしなさでこいつに勝てるやつはいないと思っている。
ただ、やることだけはちゃんとやるので、それさえ除けば出来る後輩なのは間違いない。

昨日の今日なのに、前と態度が変わってなさすぎて、昨日のことは悪い夢なんじゃないかと思ってしまう。 
いや、仲山が今玄関先にいるし、本気かどうか分からないが、この格好を見てああゆうことを言ったところを見るとそこら辺の態度は変わったのか…?
出会った時から馴々しかったせいか、好きだと言われて態度が変化しても、イマイチ実感が湧かない。
…仲山には悪いが。
最低限の身なりを整え、今日の大事な会議に必要な書類が鞄の中に入っているかを確認する。
あと、朝食用のパンも忘れずに入れ、靴を履きかけのまま外に出た。

 「待たせた。ちょい、これ持ってろ」

手に持っていたスーツを仲山に渡し、カギを閉めながらトントンと地面に爪先を落して履く。

「いえいえ、好きな人を待つのは嫌いじゃないんで」
「…お前、きもちわるい。病院行け」

顔色変えずさらりと言う仲山を、哀れみを含めた目で見る。

「恋の病は好きな人にしか治せないんで」
「おっ…まえってなんでそんなこと恥じらいもなしに言えるわけ?!関心するわ…」
「そら光栄です」

にこりと微笑まれ、仲山に嫌味は効かないのだと学習した。

「スーツありがと」
「いや、ネクタイとか締めてからでいいっすよ」
「あ、そうだった」

友人であろうと後輩であろうと、人を待たせるのはあまり好きじゃない。
家じゃなくても出来ることは歩きながらやろうと思い、カッターの首元は半開きのままネクタイを首に掛け、家を出た事を忘れていた。
エレベーターまで歩きながら身なりを整えていると、タイミングよくエレベーターが来たので乗り込む。

「ありが、とっ?」 

ネクタイも締め、スーツを受け取ろうと手を出そうとした瞬間、仲山の手が首元に近付いてきた。 

「ネクタイ、曲がってる」
「え、あぁ悪い悪い」 

いつもならきちんと出来るのだが、歩いてやっていたせいか、少し歪んでいた。
仲山の手がネクタイを緩め、直そうとするので任せることにした。
ネクタイを直し始める仲山の邪魔にならないように顎を上げる。

「…警戒、しないんすね」
「まさか。仲山だってこんなとこで襲わんだろ?」
「さあ…どうでしょ?」
「お前ねぇ…」

ネクタイを人にしてもらうのは久しぶりだった。
何年か前に妻と離婚をして、それからはそうゆうものの縁は無かった。
仕事が忙しく女を作る時間も気もなかったし、なによりも、一人の時間が楽だった。
離婚をしたいと言う妻を、「お前がいないと駄目なんだ」とかっこわるく食い下がったのが嘘のように、なんだかんだちゃんと出来ている自分に驚いた。
ネクタイに落していた視線をふと仲山の顔に向けると、真剣にネクタイ直していてくすっと笑った。 

「…何?」
「あーいや、集中すると口先尖るのな」 

1年弱一緒に仕事をしていていまさらそんなことを言うのも変かもしれないが、まじまじと顔を見たのは初めてだった。
…昨日見た草食動物を射るような鋭い表情とはまた違った、子供が難しいことをめげずに頑張っているような顔。
今まで知らなかった仲山の表情とか癖とかを、発見していくことが面白くなっていた。
顔を上げた仲山と目が合うと、すぐに目が避けられた。 

「む、かしっからの癖なんで。…はい、出来た」
「ありがと」 

エレベーターが一階に着くと同時に仲山の手が離れ、差し出されたスーツを受け取る。

「お前って長男だったりする?」
「そうですけど、なんで?」
「面倒見良いなーと思ってね。お前が女だったら嫁に欲しいな」

軽く冗談交じりに言うと、仲山は耳を赤くし、外方を向いてしまった。

「…   」 

車通りの多い道で何を言ったのか分からなかったが照れているのは確かで、こうゆう可愛いところもあるんだと、また新しく仲山を発見した。
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