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しょくじとよだれ。

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温めていた心をうけとって 1

単にやもめオヤジが書きたかっただけ…

少し…だいぶ?修正して続編的なものになりました
明らかに自分の首絞めてる…



眞野智久はアパートに独り暮らしをしている。
帰宅しても部屋には誰もいないし、ただいまを言う相手もいない。
ましてや部屋の明かりが付いてるなんてこともないし、玄関で出迎えてくれるなんてこともない。
しかし今日は違った。 

「あっおかえり!」 

ドアを開けると、エプロンを身に着けた男が台所からひょこっと顔を出した。 

「ただい…っどちらさんですか?」
「智久会いたかったー!」
「っ大貴?!ってちょ…うわっ…!」 

部屋の電気が付いてたから、また連絡もなしに母さんが来たのかと思っていた。
それなのにいたのは幼馴染で、その男にエプロン姿で熱烈に出迎えられるなんて、誰も考えないだろう。
台所から勢いよく駆け付けてくるなり、大貴は勢いよく抱きついてきた。
12年ぶりの再会は、背中と頭をドアに強打し最悪なものとなった。 


「お前さー来るなら来るって言えよ」 

ガンガンする頭を冷やし、キッチンにいる大貴に文句を言う。 
広いアパートに自分一人しか住んでいないので、リビングとキッチンが対面していることに何の意味があるのか分からなかったが、こうしてカウンターに挟まれてはいるが台所の人と向かって話せるのはいいことだと思った。

「えっ、おばさんから聞いてない?俺今年からこっちに就職することになってさ、初めての独り暮らしなわけよ。でも最初ってちょっと心細いじゃん?それをおばさんに話したら、会社が智久のアパートの近くだから智久んとこに一緒に住めば?って言ってくれてさ…」
「ちょっと待て、一緒に住む気か?!」
「うん、そうだよー荷物もあるっしょ?」 

大貴は顔を上げ、カウンターを挟んでテレビの方を指差した。
部屋が汚いせいで気付かなかったが、テレビ台の横にカバンと段ボールが5・6個詰まれていた。 

「荷物も到着済みかよ…ってか勝手に話進めてんなよな」
「おばさんが智久に話付けとくから気にするなって言ってたんだけど…」
「聞いてねぇ」
「あれま。智久ー…だめ?」 

大貴に、俯き加減に、上目遣いで頼まれるのには昔から弱かった。
それは12年たった今も変わっていないらしく、良心が揺らぐ。 

「ったく、仕方ねぇな…」 
「おっ、ということは…?」
「ただし、置いてやるんだから家事はやれよ。見ての通り俺何も出来ないからな」
「おーっけ、ありがと!だから智久大っ好きなんだ!」 

25歳になってもこんなことで喜べるなんて単純だな…。
12年経っても甘えるところは変わっていないらしい。
自分の甘さも昔と変わっていなくて呆れてしまう。
近くにいたら飛び付いてきそうなほど喜ぶ大貴に、顔が綻ぶ。 

「これくらいの事で喜びすぎだろ」
「これくらいのことじゃないよ。智久のこと大好きだからさー」
「そろそろ兄貴離れしろよ…そんで早く出て一人暮らししろ」
「えー智久つめたーい。まぁいつかね」
「いつかって」
「よっし、おまたせ!」 

言葉を遮られムッとするも、テーブルに並べられたおかずに思わず唾を飲み込む。
大皿に野菜炒めがこんもり、ご飯とワカメと卵のスープ付。
一人暮らしとなるとどうしてもコンビニ弁当か外食になってしまう。
家事も料理もまともに出来ないので尚更だった。
それに作ってくれる相手もいないので、手料理なんてものは久しぶりだった。 

「いただきまーっす」
「おいしい?」
「んへぇんへぇ」
「そりゃよかった」 

口いっぱいに野菜炒めを入れたまま喋ると大貴にくすくす笑われた。
 
「それに、毎日智久のこんな顔が見れるのがなによりも嬉しいしね」
「ン?」 

脈絡のつかめない言葉に動かしていた箸をぴたりと止め、「きもちわるいこと言ってんなよな」と付け足す。
そしてまた箸を動かし始めると、大貴が溜息を付いた。 

「思ってること言っただけなのに…」
「てかお前、今の殺し文句だぞ。女の前では気をつけろよ」
「………なの?」 
「ん?わるい、聞こえなかった」
「…別に。野菜炒めのおかわりまだあるからね」
「ああ、おう」

一瞬、真剣な視線を向けられていることに気づき顔を上げたが、目が合うと視線を逸らされ、すぐに視線が向けられた。
もうその時は真剣な顔ではなく、さっきまでの笑顔の大貴がいた。
少し、何か引っかかる感じはしたが、気にしないことにした。
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